お手持ちのマイセンに刻まれた、剣のマークや謎の数字。
「これはいったい何だろう?」と気になったことはありませんか。
この記事では、マイセンのバックスタンプから年代を読み解く方法や、象徴的な剣マークが持つ本当の意味について詳しく解説します。
さらに、作品の裏印やペインター番号といった数字の役割から、刻印で偽物を見抜くための見分け方、人気のブルーオニオンやヤフオクで注意すべき偽物の特徴、そして意外と知られていないマイセンのスクラッチの謎まで、あなたの疑問を解消する情報を網羅しました。
記事のポイント
- バックスタンプのマークで年代を判別する方法
- ペインター番号や裏印など数字が持つ意味
- 刻印や造形から偽物を見分ける具体的なポイント
- スクラッチの意味など知っておきたい豆知識
マイセンのマークと数字で年代を見分ける基礎知識
- 剣マークが持つ本当の意味とは?
- バックスタンプで見る年代の変遷
- 作品の裏印から読み取れる情報
- 作品を彩るペインター番号の役割
剣マークが持つ本当の意味とは?

マイセンの象徴としてあまりにも有名な、交差する2本の剣。
これは「双剣マーク」と呼ばれ、単なるブランドロゴ以上の重要な意味と歴史を持っています。
この高貴なデザインの由来は、18世紀初頭、マイセン窯の創立者であるザクセン選帝侯アウグスト強王の紋章にあります。
当時、東洋からもたらされる磁器は「白い金」と称されるほど貴重であり、アウグスト強王はヨーロッパで初めて硬質磁器の製造に成功しました。
双剣マークは、王家の威光と、ヨーロッパ磁器の頂点に立つという誇りを象徴する、特別な印なのです。
驚くべきことに、この剣マークは1722年に採用されて以来、現在に至るまで職人の手によって一点一点フリーハンドで描かれ続けています。
そのため、同じように見えても一つとして全く同じマークは存在しません。
この揺るぎない手描きの伝統こそが、機械による大量生産品とは一線を画す、マイセンの品質と芸術性へのこだわりの証と言えるでしょう。
剣マークが語る3つのこと
- 王家の権威:ザクセン選帝侯の紋章に由来する高貴なデザイン。
- 手仕事の証:職人による手描きのため、一つひとつに個性と温かみがある。
- 品質の保証:マイセンの厳しい品質基準をクリアした真正な作品であることの証明。
ただし、このマークがあるからといって、それだけで全ての真贋を判断するのは早計です。
偽物もまた、このマークを巧みに模倣します。マークの描き方の特徴や、後述する他の印と合わせて総合的に確認することが、作品を深く理解し、その価値を正しく見極めるための第一歩となります。
バックスタンプで見る年代の変遷

作品の裏側にある印、すなわちバックスタンプは、マイセンのおおよその製造年代を特定するための最も重要な手がかりです。
特に剣マークのデザインは、300年以上の歴史の中で社会情勢や流行を反映し、少しずつ変化してきました。(参照:マイセン公式サイト「マイセンの歴史」)
ここでは、代表的な年代ごとのマークの特徴を、実際の図と共に詳しくご紹介します。
お手持ちのマイセンがどの時代の空気をまとっているのか、ぜひ見比べてみてください。
年代 | マークの図(サンプル) | マークの特徴 | 通称・備考 |
---|---|---|---|
1722年頃~ | ![]() | 比較的シンプルな双剣マーク。剣の交差角度や柄のデザインがまだ安定していない時期。 | 初期の双剣マーク。非常に希少価値が高い。 |
1763年~1774年 | ![]() | 双剣の交差する部分の下に、小さな「点」が描かれます。 | ドット期。比較的短い期間のため、特定しやすいのが特徴。 |
1774年~1815年 | ![]() | 双剣の交差する部分の下に、アスタリスクのような「星」が描かれます。 | マルコリーニ期。ナポレオン戦争の時代と重なり、激動の時代に作られた作品です。 |
1815年~1924年 | ![]() | 穏やかなカーブを描く剣。柄頭(つかがしら)が丸いのが特徴。約100年続いたデザインです。 | ボタン剣、ポンメル剣などと呼ばれます。アンティーク市場で最も多く見られるマークの一つ。 |
1924年~1933年 | ![]() | 剣が直線的で非常にシャープなデザインに変化。柄頭がなくなり、よりモダンな印象に。 | ファイファー期。アール・デコの時代精神を反映したデザインです。 |
1934年~ | ![]() | ファイファー期よりさらに洗練され、現在のマークの原型となります。 | 現代のマーク。第二次世界大EER後の製品には、年代を示す小さな記号が付加されることもあります。 |
注意点:手描きによる個体差
前述の通り、マークは全て手描きのため、同じ年代であっても職人による個体差が非常に大きいです。
線の太さ、剣の角度、点の大きさなど、一つひとつに個性があります。
また、ここに挙げた以外にも多くのバリエーションが存在するため、表はあくまで大まかな目安として捉え、総合的な判断を心がけてください。
これらの変遷を知ることで、お手持ちのマイセンがどのような歴史的背景のもとに作られたのかを想像する、知的な楽しみが生まれます。
作品の裏印から読み取れる情報
マイセンの裏印には、剣マークや年代を示すマーク以外にも、作品の出自や特性を示す様々な情報が記されていることがあります。
これらは作品の「戸籍」のようなものであり、読み解くことで、さらに深く作品を理解できます。
白磁製品を示す「weiss」

「波の戯れ」シリーズのような白磁(絵付けのない白い磁器)の製品には、ドイツ語で「白」を意味する「weiss」という文字が書かれている場合があります。
これは、マイセンが無地の白磁として販売したことを示すものです。当時、ヨーロッパでは磁器に上絵付けを施す「ポーセリンペインティング」が流行しており、マイセンはそうした愛好家や他の工房向けに、素材としての白磁も供給していました。
そのため、もしこの印がある製品に絵付けがされていた場合、それはマイセン以外の第三者が後から絵付けを行った「外部絵付け品」である可能性が考えられます。
限定生産品の特別なマーク

マイセンでは、窯の創立周年や歴史的な出来事を記念して、特別な限定生産品を製造することがあります。
これらの希少な作品には、通常の剣マークに加えて、その年やテーマを象徴する特別な記念マークが入れられます。
例えば、2000年のミレニアム記念品にはアウグスト強王のモノグラム「AR」が、2003年のローズエディションには金の薔薇が描かれるなど、コレクター心をくすぐる特別感あふれるデザインが特徴です。
生産数を示すシリアルナンバー(例:15/100)が併記されていることも多く、その希少価値を物語っています。
豆知識:その他の特殊なマーク
- 陶板の「A」マーク:かつて、高度な技術を要する陶板(プラーク)は専門のアトリエで製作されており、その製品にはアトリエ製であることを示す「A」というサインが入っていました。現在はこのマークは使われておらず、アトリエ時代の貴重な作品である証です。
- 「HW」のサイン:「インドの華」などをデザインしたハインツ・ヴェルナー氏など、著名なデザイナーの作品には、そのイニシャルがデザインの一部として入れられることがあります。
- ユニカート(Unikat):特定の作家が制作した一点物の芸術作品には、この印が記されることがあります。「ユニークピース」とも呼ばれ、最高級のコレクションとして扱われます。
- 作品を彩るペインター番号の役割
剣マークの近くをよく見ると、朱色や赤色で手書きされた小さな数字が見つかることがあります。
これは「ペインター番号」と呼ばれ、その作品の絵付けを担当した職人を識別するための、いわば職人のサイン代わりの番号です。

マイセンでは、造形、絵付け、金彩など多くの工程が、高度に専門化された職人による分業で行われています。
誰がどの作品の絵付けを担当したのかを正確に記録し、品質を管理するために、職人一人ひとりに割り振られたこの番号が記されるのです。
この番号があることで、万が一品質に問題があった場合に、どの職人の仕事かを遡って確認できる体制が整っています。
インクの滲みや、ブルーオニオンのような染付の場合は文字が潰れていて、判読が難しいことも多いんです。
ですが、この小さな数字から、作品に命を吹き込んだ名もなき職人の存在を感じ取ることができ、より一層作品への愛着が湧いてきますね。
また、Bフォーム(宮廷小花)シリーズや豪華な金彩が施された作品では、花の絵付けをしたペインター番号と、金彩を施したペインター番号がそれぞれ別に記されることもあります。

これは、マイセンがいかに厳格な品質管理と徹底した分業体制のもとに、最高品質の磁器を生み出しているかを物語っています。
マイセンのマークと数字で偽物を見抜くポイント

- 偽物の見分け方7つのチェック項目
- 刻印に隠された偽物のサイン
- マークと年代の矛盾に注意
- ブルーオニオンの偽物を見分ける
- ヤフオクで見られるマイセン偽物の特徴
- マイセンのスクラッチは偽物なの?
偽物の見分け方7つのチェック項目

残念ながら、世界的な人気と高い価値を誇るマイセンには、精巧に作られた偽物も多く存在します。
しかし、いくつかのポイントを注意深く、そして総合的に観察することで、偽物を見抜ける可能性は格段に高まります。
ここでは、真贋を見極めるための7つの基本的なチェック項目を、より詳しく解説します。
- マークは釉薬の下にあるか?
最も基本的かつ重要なポイントです。本物のマイセンは、素焼きの生地にコバルトで剣マークを描いた後、釉薬をかけて高温で焼き上げます。そのため、マークは釉薬の透明な層の下にあり、表面にはワックスをかけたような滑らかな光沢が見られます。もしマークが釉薬の上に乗っているように見え、光沢がなかったり、指で触るとわずかな凹凸を感じたりする場合は、後から描き足された偽物の可能性が非常に高いです。 - 造形は繊細か?
特にマイセン人形(フィギュリン)の真贋を見極める上で決定的な差となります。本物は、人物の指先の爪、衣服のレースのひだ、髪の毛の流れといった細部に至るまで、驚くほどシャープで繊細な造形が施されています。偽物は全体的に作りが甘く、細部が潰れていたり、のっぺりとした印象を受けたりします。 - 絵付けは生き生きとしているか?
本物の絵付けは、色の濃淡や筆遣いが巧みで、人物の表情が豊かで生命感にあふれています。特に人形の瞳には輝きがあり、視線が定まっています。偽物は表情が乏しく、不自然なほど鮮やかすぎる彩色がされていたり、筆跡が雑だったりすることが多いです。 - モデル番号は適切か?
人形の多くにはモデル番号が刻印されています。この番号の有無や、後述する刻印方法(手書きか機械か)が、バックスタンプの年代と一致しているかを確認します。 - 不自然な空気穴はないか?
中空の陶器を焼く際には、内部の空気が膨張して破損するのを防ぐための空気穴が必要です。本物のマイセンでは、この空気穴は衣服のひだの陰や装飾の裏側など、目立たない場所に巧みに設けられています。偽物では、この空気穴が目立つ場所に雑に開けられていることがあります。 - サイズや重さは適正か?
偽物の中には、本物を型取りして作られるものがあります。この方法で作ると、粘土が乾燥・焼成する過程で収縮するため、本物よりも一回り(一説には10%以上)小さく、軽くなってしまいます。可能であれば、専門のカタログや信頼できるデータベースで正規の寸法や重量を確認するのも有効な手段です。 - 白磁の色合いは自然か?
マイセンが長年かけて完成させた白磁は、カオリンという良質な原料に由来する、わずかに青みがかった透明感のある美しい白色が特徴です。偽物の中には、不自然なほど真っ白であったり、逆に黄ばんだクリーム色や、くすんだ灰色がかった色合いのものが見られます。
これらのポイントを一つひとつ丹念にチェックし、少しでも違和感を覚えた場合は、専門家の意見を求めるなど慎重な判断が必要です。
刻印に隠された偽物のサイン

マイセンの人形(フィギュリン)の真贋を見極める上で、モデル番号の「刻印」は非常に重要な手がかりとなります。
モデル番号とは、オリジナルの人形がデザインされた際に割り当てられる1桁〜4桁の数字(またはアルファベットと数字の組み合わせ)で、通常は土台の裏に刻まれています。
ここで注目すべきは、その刻印方法が時代によって明確に異なるという点です。
この歴史的な事実を知っているかどうかが、真贋を見抜く分水嶺となることもあります。
モデル番号の刻印方法の歴史的変遷
- 1950年頃以前:職人がヘラなどの道具を使って粘土が柔らかいうちに刻んだ、手書きの刻印。文字の深さや形に個体差があります。
- 1950年頃以降:均一で整った機械による刻印(スタンプ)。戦後の生産効率化の流れを汲んだものです。
この時代の違いが悪用され、巧妙な偽物が作られることがあります。
年代の矛盾という決定的証拠!
例えば、バックスタンプが明らかに19世紀の「ボタン剣」であるにもかかわらず、モデル番号がくっきりと整った機械刻印であった場合、それは絶対にありえない年代の矛盾です。
このような作品は、後年に作られた本物のマイセン人形ではない可能性が極めて高いと言えます。
ただし、ごく稀に職人が刻印を忘れてしまった製品や、カタログに掲載されていない特注品なども存在するため、モデル番号がないからといって直ちに偽物と断定することはできません。
あくまで、他のチェック項目と合わせて総合的に判断する材料の一つと考えるのが良いでしょう。
マークと年代の矛盾に注意

前述のモデル番号と同様に、バックスタンプの剣マークが示す年代と、作品自体のデザインが発表された年代との間に矛盾がないかを確認することも、偽物を見抜く上で非常に有効で、論理的な方法です。
偽物の製作者は、マイセンの300年以上にわたる膨大なデザインやマークの歴史に関する知識が不十分な場合が多く、しばしばありえない組み合わせのマークを使用してしまいます。
具体的な矛盾の例
想像してみてください。あなたがアンティークショップで、優美なロココ様式のカップ&ソーサーを見つけたとします。
そのデザインは、文献やメトロポリタン美術館などの収蔵品データベースで、マイセンの天才造形家ケンドラーが活躍した「1740年代に発表されたもの」と確認できました。
(参照:メトロポリタン美術館公式サイト)
期待に胸を膨らませて裏返してみると、そこにあったのは1920年代のシャープな「ファイファー期」の剣マークでした。これは一体どういうことでしょうか。
これは、時間軸が完全に狂った明らかな矛盾です。
未来のマークを過去の製品に描くことは不可能なため、このような作品は後年に作られた偽物か、あるいは全く別の工房による「マイセン風」の模倣品であると強く疑うことができます。
この方法を実践するには、少し専門的な知識が必要になりますね。
「The Book of Meissen」や「Meissen: Collector’s Catalogue」といった専門書籍が、デザインの年代を調べる上で非常に役立ちます。
インターネットでモデル番号やデザインの特徴を検索してみるのも良い第一歩です。
少し手間はかかりますが、マークの年代とデザインの年代を照合する習慣をつけることで、論理的に偽物を排除し、購入してしまうリスクを大幅に減らすことができます。
ブルーオニオンの偽物を見分ける

マイセンの代名詞とも言える不朽の名作「ブルーオニオン」。
日本の古伊万里様式に影響を受けたこのオリエンタルなデザインは、1739年の誕生以来、300年近くにわたり世界中で愛され続けていますが、その絶大な人気ゆえに最も数多くの偽物が存在するシリーズでもあります。
ブルーオニオンの偽物を見分ける基本的なポイントは他のシリーズと共通していますが、このデザインならではの特に注意したい点がいくつかあります。
チェックポイント①:バックスタンプと剣マーク
まず確認すべきは、やはり裏の剣マークです。
本物のブルーオニオンのマークは、他のシリーズ同様、職人による手描きです。
特にプレートの縁にある網目模様の輪の中や、カップの高台内に描かれることが多いです。
もしマークが印刷のように均一で、手描き特有の濃淡や線の揺らぎが見られない場合は、偽物を疑う必要があります。
本物のブルーオニオンでも、染付のインクが滲んでバックスタンプの文字が潰れ、読みにくくなっていることは日常茶飯事です。
文字が読めないこと自体は、必ずしも偽物の証拠にはなりませんのでご安心ください。
チェックポイント②:絵付けの品質と色の深み
次に、ブルーオニオンの命とも言える絵付けの品質に注目しましょう。ここには本物と偽物の間に、歴然とした差が現れます。
- 本物:染付に用いられる藍色(コバルトブルー)に、深く、透明感のある色合いと豊かな濃淡があります。線の強弱がリズミカルで、タマネギ(実はザクロ)やザクロ(実は桃)、竹などのモチーフが生き生きと描かれています。
- 偽物:色が単調で、のっぺりとした平坦な印象を受けます。線の太さが均一であったり、絵柄がぼやけて滲んでいたりと、全体的に作りが雑で生命感に欠けるものが多いです。
本物を数多く見ることで、その繊細な筆致やコバルトブルーの深みを見分ける「目」が養われます。
機会があれば、ぜひ正規店や美術館などで本物の質感、色、重さに触れてみてください。
ヤフオクで見られるマイセン偽物の特徴

ヤフーオークション(ヤフオク)やメルカリなどの個人間取引サイトは、思わぬ掘り出し物に出会える可能性がある魅力的な市場ですが、その匿名性の高さから、残念ながら偽物が最も多く流通している場所の一つでもあり、購入には細心の注意が必要です。
特に、悪質な出品者が用いる典型的な偽物には、いくつかの共通した特徴が見られます。
これを知っておくだけでも、被害に遭うリスクを大きく減らせます。
特徴①:印刷による絵付け
特に高価な「アラビアンナイト(千夜一夜物語)」シリーズなどで頻繁に見られる手口が、手描きではなく印刷で絵柄を付けた偽物です。
商品説明では「一点一点手描き」「職人の逸品」などと謳っていても、実際は安価なプリントであるケースが後を絶ちません。
印刷を見破る決定的証拠!
スマートフォンのカメラなどで出品画像を最大限に拡大してみてください。もし絵柄の部分に、新聞の写真のような規則正しい色の点(ドット)が見えたら、それは「オフセット印刷」である動わかぬ証拠です。本物の手描き作品に、このような機械的なドットは絶対に存在しません。
特徴②:不審なバックスタンプと言葉遣い

バックスタンプにも、分かりやすい偽物の特徴が現れることがあります。
その一つが、剣マークの下に「Since ○○○○」といった、ありもしない創業年などが記されているものです。
これは、主に中国などで作られる粗悪なコピー品によく見られる特徴で、本物のマイセンには絶対に存在しない表記です。
また、商品説明の言葉遣いにも注意が必要です。「マイセン風」「~スタイル」「ドレスデン様式」といった言葉は、巧妙に偽物であることを示唆しています。
丁寧な説明文や「未使用美品」といった言葉に惑わされず、市場価格より著しく安い価格で出品されている場合は、まず偽物を疑う姿勢が重要です。
「本物ですか?」という質問に対し、出品者が明確な回答を避ける、あるいは質問のコメントを削除するような場合も、取引を避けるべき危険なサインです。
マイセンのスクラッチは偽物なの?

マイセンの裏印を調べていると、剣マークの上に、まるでキャンセルするようにダイヤモンドの針で引っ掻いた線(スクラッチ)が入っている作品に出会うことがあります。
「傷物?」「もしかして偽物?」と不安に思われるかもしれませんが、ご安心ください。これは偽物を示すものでは全くありません。
このスクラッチは、マイセンの工場で何段階にもわたる厳格な検品が行われた際に、マイセンが定める最高品質(一級品)の基準にわずかに満たなかった製品であることを示すための、正直さの証とも言える印なのです。
スクラッチの本数と意味
スクラッチは、その本数によって意味が異なります。これは「キャンセレーションマーク」とも呼ばれ、正規価格で再販されることを防ぐ目的もあります。
スクラッチの本数 | 等級 | 主な理由 |
---|---|---|
1本線 | 外部絵付け用など | 白磁を外部の工房に販売し、マイセン以外で絵付けされたものなど。 |
2本線 | 2級品 (Second Quality) | ごくわずかな色ムラや鉄粉(黒い点)、形の歪み、金彩の厚み不足など、専門家でなければ判別困難な理由で2級品とされたもの。 |
4本線 | 級外品 (Staff Sale) | 主にマイセンの社内関係者向けに販売されたものなど。 |
※スクラッチの入れ方や本数の意味は、年代によっても異なります。
2級品は、私たちの目で見て一級品との違いを判別するのはほとんど不可能と言っても過言ではありません。
ドイツ本国では定価の2割引程度で販売されることもあり、品質に強いこだわりがなければ、かえってお得に本物のマイセンを手に入れる賢い選択肢とも言えます。
価値としては一級品よりは下がりますが、まぎれもなくマイセンの工房で、一流の職人たちの手によって製造された本物の製品であることに変わりはありません。
マイセンのマークと数字を理解しよう:記事のまとめ
ここまで見てきたように、マイセンのバックスタンプに記されたマークと数字は、単なる記号ではありません。一つひとつの作品が持つ歴史や背景、品質を解き明かすための重要な鍵なのです。この記事の要点を以下にまとめます。
- 剣マークはアウグスト強王の紋章に由来する品質と権威の証
- バックスタンプのデザイン変遷を追うことで大まかな製造年代がわかる
- マルコリーニ期(1774-1815年)は剣マークの間に星が描かれるのが特徴
- 裏印の「weiss」はマイセンが外部絵付け用に販売した白磁を示す
- 朱色の数字は作品の絵付けを担当したペインター番号であり品質管理の証
- 偽物を見分けるにはマーク、造形、絵付け、重さなど多角的な視点が必要
- 本物のマークは釉薬の下にあり、釉薬の上にあるものは偽物の可能性が高い
- 人形のモデル番号は1950年頃を境に手書きから機械刻印へと変化した
- マークの年代とデザインが発表された年代に矛盾がないか確認することが重要
- 人気のブルーオニオンの偽物は絵付けが単調でのっぺりしていることが多い
- ヤフオクなどでは印刷による絵付けや「Since」表記のある偽物に注意
- 出品画像を拡大して印刷特有のドット(網点)がないか確認する
- 剣マークの上にあるスクラッチは偽物ではなく2級品などを示す印
- スクラッチは2本線が2級品、4本線が級外品など本数によって意味が異なる
- マークと数字の知識は偽物を避け、コレクションをより深く楽しむために不可欠
これらの知識を身につけることで、作品への愛着がさらに深まるだけでなく、誤って価値の低い偽物を手にしてしまうリスクを減らすことができます。
ぜひ、お手持ちのコレクションを改めてじっくりと観察し、その裏側に秘められた300年の物語を読み解いてみてください。
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